東京高等裁判所 昭和42年(行ケ)114号 判決
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〔判決理由〕(本件審決を取り消すべき事由の有無について)
二 原告は、本件審決は、その主張の四点において判断を誤つた違法があり、取り消されるべきであると主張するが、この主張は、以下に説示するとおり、理由がないものといわざるをえない。
(一) 一致点に関する判断について
当事者間に争いのない本願発明の要旨と引用方法の技術内容とを比較すると、両者は、共に鯣を膨脹剤を加えた衣で揚げるものである点(構成)及び酒のつまみに適する鯣揚げ物の製造法である点(目的)において一致することは、たやすくみうるところである。したがつて、両者を、その限りにおいて目的及び構成において一致するとした判断には、やや概括的な判断である嫌いはあるが、いささかの誤りもない。原告は、この点に関し、本件審決は、(a)小麦粉と澱粉との配合割合、(b)膨脹剤の主材及び(c)揚げ油の一定温度保持の点において相違することを看過したものである旨主張するが、これらの諸点は、両者を技術的に比較する場合において、とくに相違点として取り上げるに値するものでないことは、被告が答弁として述べるとおりであるから、原告の右主張は、被告の答弁の項に掲げた理由により、採用に値しないものである。
(二) 相違点1について
<書証>によれば、本件審決認定のとおり、鯣を一%醋酸水溶液に浸漬したのち戻す方法が本願出願前公知であつた事実を認めうべく、右公知方法と本願発明とを比較すると、前掲「相違点1」に摘示された本願発明における技術は、結局、右公知方法と同一技術思想を具体化したものと認めるを相当とし、食品に添加しうべき保存剤として周知のデハイドロ醋酸ソーダ等の保存剤を調味液に溶かして揚げ種に滲み込ませるようなこと及び衣と揚げ種のいずれを調味するかというようなことは、当業者の適宜選択して実施しうる範囲に属するものというべく、そこに特許に値する高度の技術的創作性があるものと解することはできない。したがつて、この点に関する本件審決に誤りがあるということはできない。<中略>
(三) 相違点2について
本願発明は、揚げ油に保存剤を加える点において何らの防腐剤を用いない引用方法と相違するが、保存剤として例示されたパラオキシン安息香酸プロピルエステル等は、食品添加の防腐剤として、その性質、溶解性等がすべて周知の物質であることは、本件弁論の全趣旨に徴し明白なところであるから、これを揚げ油に加えるようなことは、それによつて揚げ種の防腐剤を中和するかどうかはともかくとして、少なくとも生成される揚げ物の防腐作用に貢献するものであることは見易いところであるから、これを揚げ油に加えるようなことは当業者の適宜実施しうる程度のことというべく、そこに特許に値する高度の技術的創作性があるもものとみることはできない。したがつて、これと同趣旨に帰する本件審決に判断を誤つた違法があるとすることはできない。この点に関し原告は、パラオキシン安息香酸プロピルエステルのような熱に強い防腐剤を油中に加える目的及び効果、とくに揚げ種の栄養及び味覚の破壊の防止、この防腐剤の節減による生産価格の低下を強調して、この種防腐剤を揚げ油中に加えることに独創的技術的意義がある旨主張するが、本件における全立証によるも、その主張する効果なるものも、また生産価格の引下なるものも、いずれも特に顕著なものがあるとは認めえない。したがつて、あるいは、若干の程度において、原告主張のような効果を期待しえたとしても、もとより、これをもつて、特許に値する技術的創作性とすることはできないから、原告のこの点に関する主張も採用することはできない。<中略>
(むすび)
三 叙上のとおりであるから、その主張の点に判断を誤つた違法のあることを理由に本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、理由がないものというほかはない。よつて、これを棄却する。
(三宅正雄 土肥原光圀 武居二郎)